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2017年11月21日

サイクロン掃除機を自作!100均グッズを活用した集塵機でゴミを分離する



100均集塵機

今回は、前回作成したダンボール工作室でも使えるサイクロン集塵機を自作します。
もちろん掃除機としても使えますが、メインは木を切ったり削ったりした時に出る切りカスや、ヤスリがけで出る粉を集める事です。
木の切削屑はまだ良いのですが、ヤスリがけで出る粉は非常に細かくて厄介です。

紙パック式の掃除機は、紙パック自体がフィルターの役割を兼ねています。
紙が細かいゴミを濾し取って綺麗な空気を排気しますが、木の粉を少し吸うとあっという間に目詰まりして排気出来なくなります。
ちょっと吸っては紙パックを交換するという作業を繰り返せば使えなくはありませんが、実用的ではありません。

高価なサイクロン掃除機は紙パック式より目詰まりしませんが、フィルターが詰まると紙パック式と同じく排気しなくなります。
フィルターが目詰まりしたら洗って汚れを取らねばなりません。
フィルター洗浄をすると、完全乾燥するまで作業が止まってしまいます。

そこで、ご家庭にある掃除機の吸引力を利用したサイクロン集塵機を自作し、粉塵などのゴミを掃除機に入る前に取り除こうというわけです。

木材のヤスリがけで出る大量の粉は非常にかるく、ちょっと動いただけでも舞い上がります。
舞い上がる前に集塵機で吸い取れば周囲を汚しません。

市販されている集塵機では、E-Valueの乾湿両用バキュームクリーナーEX-20SA、リョービの集じん機VC-51が気になりました。
E-ValueのEX-20SAの騒音値は78dBです。
リョービのVC-51は、動作音表示が無いので凄くうるさいのでしょう。

欲しいと思ったのは、マキタのM442という集塵機です。
運転音が63dBで、乗用車や会話くらいの音量です。
工具で定評があるマキタなので、品質も悪くないはず。
ただ1.8万円は厳しい。
頻繁にDIYをしない私では、無用の長物となるので諦めて自作する事に!

調べると海外にもサイクロン式集塵機を自作している方が多く居ることが判りました。
ガラス製ケースを自作して中が見える状態にしたものをネットで見かけました。
ゴミが回って落ちる様子が見えるのが面白かったです。
業務用の工作機械を使って作っているので、ほとんどプロと言っても良いレベルです。
海外は本気度が違いますな。

日本でも自作されている方をちらほら見かけます。
集塵容器の上に工事用コーンなど逆三角形のパーツを付けた形状が多いです。
当記事でご紹介する仕組みは、日本のそれとは違います。
海外の個人ブログや動画などを参考にさせていただきました。

集塵効率を考えると色々やりようはありますが、今回は空気を回すだけの集塵機です。
構造が単純なので最小限の材量で作れ、材量も100均で手に入る物が多いので低価格です!
嵩張らないので収納場所に困る事もありません。
本格的な集塵機を買うほどではないという方や、年に数回しか使わない方には丁度良いと思います。


サイクロンとダイソン


サイクロンとは、1886年にアメリカのモース氏が発明した粉体分離方式の呼び名です。
コーン状の筒の中で空気を回転させ遠心力によって空気と粉体を分離するというもの。

サイクロン式の掃除機と言えばダイソンが有名ですよね。
1983年にイギリス人のジェームズ・ダイソン氏が、サイクロンを応用して、あの掃除機が誕生しました。

最初は私財を投げ打って5000台以上の試作品を作ったそうです。
1991年にサイクロン掃除機の初号機「G-Force」が日本で開催された国際産業デザイン見本市で賞を受賞します。
これに感銘を受けた日本のシルバー精工という会社がライセンスを取得して製造販売を開始しました。

しかし、本国のイギリスではライセンスを取得して製造販売してくれるメーカーは見つかりませんでした。
それならば自分で作るしかないと考えたダイソン氏は、日本のライセンス料を元手にダイソン社を起業しました。
ここからダイソンブランドが始まり、今に至ります。
日本の企業がライセンス契約をしていなかったら今のダイソンは無かったかもしれませんね。

ダイソン社のホームページに「製材工場の屋根に木くずと空気を分離するサイクロン装置を見てひらめきました」と書かれています。
サイクロン式が集塵機に向いている事は、この事からも解ります。

サイクロンは意外と単純で、空気を回転させるだけも機能します。
空気中にあるゴミは遠心力によって周囲の壁に当たり、ダストボックスに落ちます。
基本的にはどのサイクロン掃除機も、この原理でゴミを分離しています。


サイクロン掃除機の材料


100均で揃えられる材量は、バケツ、洗面器、観葉植物などの鉢下に敷く鉢受皿、掃除機用延長ノズルです。
出来る限り100均で安く揃えましょう。

その他に、掃除機用(洗濯用も可)の延長ホースと、L字パイプが必要なのでホームセンターやネットで購入しましょう。
ホースとL字パイプの詳細は下の方で。

バケツは良くあるポリ製の10Lサイズを購入しましたが、容量を小さくしたい場合はゴミ箱を利用しても構いません。
バケツ内は負圧になるため、丈夫な方が良いと思います。
バケツでは無く、丈夫なスチール製ペール缶を使っても良いです。

空気の吸入口塞いでしまうと、ビニール袋の中を掃除機で強烈に吸っている状態と同じになってバケツ内が真空パック状態になります。
掃除機の吸引力が強いとバケツがへこんだり割れたりします。
ゴミを吸い取っている時にうっかり吸込口を塞ぐ事が無ければ、強い負圧になりませんのでバケツでも十分です。

自作サイクロン式集塵機の構造は、このような形になります。
サイクロン集塵機の仕組み
掃除機の吸引力によって洗面器と鉢受皿の間に回転する空気の流れを作ります。
吸入口から空気と一緒にゴミが入ります。
空気の回転による遠心力によって、ゴミは洗面器の横に叩きつけられ下の穴からバケツの底に落ちます。
ゴミを落として綺麗になった空気は、鉢受皿の中央のホースから掃除機に吸われて行きます。
それで、掃除機内にゴミが溜まらないというわけです。

少し大きめな切りくずは上手く分離されて100%バケツに溜まりますが、非常に細かい粉塵はごく少量掃除機に吸われてしまいます。
紙パックが詰まるほど吸われる事はないのでご安心を。
正確に計っていませんが、木の粉が90%以上バケツに溜まる感じです。

もっと集塵率を上げるなら、鉢受皿の中央に接続する掃除機のホース先にストッキングなどを被せ、フィルター代わりにしてください。
多少吸引力が犠牲になりますが、掃除機本体への粉塵侵入をもっと防げると思います。
私はそのようなフィルターを付けていないので、各自で工夫してみてください。

重要なのは密閉度です。
バケツに洗面器を入れた時に洗面器がバケツの途中で引っ掛かり、周囲に隙間が出来ない大きさが必要です。
鉢受け皿は、バケツに乗せた時に隙間が無い状態でなければなりません。
サイクロン集塵機の隙間
洗面器とバケツ、バケツと鉢受皿それぞれで隙間が出来ないものを購入してください。
隙間があると空気が漏れ、集塵出来ません。
100均に行ってバケツに洗面器と鉢受皿を当ててピッタリくる商品を探しましょう。

私は洗面器と鉢受皿を使っていますが、同じ構造なら他のもので代用しても構いません。
鉢受皿はバケツに蓋が出来れば良いので、プラ製のおぼんや皿でも構いません。
吸引を始めると鉢受皿はバケツ内部の負圧によって引っ張られ、バケツに固定されます。
バケツに乗せた状態で固定されなくても良いので、隙間が出来ないものを選んでください。


サイクロン掃除機の作り方


少々手間は掛かりますが、各パーツを加工します。

先ずは、洗面器です。
洗面器の下に外周に沿って2つの穴を開けます。
洗面器の加工
どうやって穴を開けても良いですが、私は電動ドリルで幾つか穴を開け、カッターで切って行きました。
100均の洗面器はペラペラなので、それほど苦労無く加工出来ると思いますが怪我には気を付けましょう。

実際の洗面器の加工後
洗面器加工後

裏面はこんな状態。
油性ペンで穴の位置を書いから穴を開けたので、少し残ってます。
洗面器加工後裏面

洗面器をバケツにセットしたところ。
洗面器をバケツにセット
若干穴が汚いのは御愛嬌。
ゴミが落ちる穴があれば良いのです。

次に、ホームセンターで「掃除機延長ホース」と「TS継手エルボ」というL字の塩ビパイプを買ってきましょう。
「TS継手エルボ」とか「TS-L」と記載されている事もあります。

私が購入したのは、東洋管機という会社の「給水用塩ビTS継手(スタンダードタイプ)TSL25」という商品です。
サイズが25というもので、パイプ外径が4cmくらいです。
80円くらいだったはず。

掃除機用延長ホースに合うなら、どこのメーカー製でも構いません。
ホームセンターの塩ビパイプコーナーに行くと解りますが、パイプ類はメーカー記載は無いはずです。

掃除機用の延長ホースは、お好みの長さを選んでください。
洗濯機の延長ホースでも構いません。
1番安いので良いと思います。

ホームセンターで掃除機用延長ホースをL字パイプに当てて大きさを確認しましょう。
加工しなくても延長ホースの先がL字パイプにピッタリ入る大きさのものがあるはずです。

掃除機用延長ノズルも買っておきましょう。
こちらはブラシ付きですが、ブラシは要りません。
ダイソーの掃除機用延長ノズルが薄くて加工しやすいのでオススメ。
「そうじ機2段式延長ノズル」とか「ロングノズル」などの商品名で売っているはずです。

先が細くなっているノズル部分は要らないのでカットします。
使うのは、掃除機のホースが接続出来る右の方です。
延長ノズルカット
次に、鉢受皿に2つの丸い穴を開けます。
鉢受け皿の加工
中央の穴が掃除機用延長ノズルを刺す穴で、端の穴はL字パイプを通す穴です。
掃除機用延長ノズルを中央の穴に取りつけますが、カットした方を下にして取り付けます。
端の穴にL字パイプを取り付けるので、洗面器と干渉しない位置(ちょっと内側)に穴を開けてください。

電動ドリルで丁度良い穴径の刃を持っていると楽ですが、持っていない方は小さい穴を開けてハサミやカッターで少しづつ穴を大きくしましょう。
穴にパーツをねじ込むように入れ、入らなければ少し穴を削り、またねじ込むように入れるという作業を繰り返すと隙間の無い穴が開けられます。
もし穴が大きくなってしまったら、パーツと一緒に隙間をガムテープなどを貼って完全に隙間を塞いで下さい。
隙間があると空気が漏れて集塵出来ません。

穴を開けて、掃除機用延長ノズルとL字パイプを差し込むと、こんな感じになります。
鉢受け皿の加工2
この写真は解りやすくするため、中央の掃除機用ノズルは取り付けていません。
穴の大きさをぴったりにしたので、どちらの穴にもテープを使わずに密閉度が保てています。
L字パイプは、キツく刺しているので引っ張っても外れません。
鉢受け皿は適度に軟らかい素材なので、隙間なく加工するのに向いています。

裏から見ると、このようになります。
L字パイプは裏側に曲がった部分が出るように取り付けます。
鉢受け皿裏面
L字パイプから風が入って風が洗面器のフチを回るようL字パイプの向きを調整します。

この鉢受皿をバケツに乗せれば、完成です。
サイクロン集塵機の完成


収納時はコンパクトに!


狭い我が家では、コンパクトに収納できる事も大事です。
収納時は掃除機用ノズルを鉢受皿から引き抜き、バケツの中に丸めたホースと一緒に入れています。
サイクロン集塵機の収納
この上に洗面器を入れ鉢受皿を乗せれば、ほぼバケツの大きさで収まります。
素敵でしょ!

自作サイクロン集塵機で、バケツの上にコーン状パーツを乗せる方式もあります。
おそらく日本では、そっちの方がメジャーです。
コーン状のパーツ内で空気を回した方がゴミと空気を分ける能力が上がりますが、装置が大がかりになるので収納がコンパクトに出来ません。
私はそれほど頻繁に木工をやるわけでは無いので、小さく収納できないと邪魔なのです。


最高ですが、少しだけ面倒なところも


非常に安くサイクロン式集塵機が出来ます。
おそらく全部で1,000円かかっていないと思います。

集塵能力も実用レベルです。
洗面器に開けた穴の大きさまでのゴミが吸えるので、木の粉だけでなく小さな木片や切り屑などにも使えます。
自動的にゴミがバケツの底に溜まるのが面白いです。

私は木工用でしか使っていませんが、模型のヤスリがけにも良いと思います。
パテや部品を削る時に削りカスが結構出ますよね。
バケツを使った集塵機だと部品を吸ってしまいそうなので、模型用なら掃除機もバケツも小型化した方が良いでしょう。
接続する掃除機は、吸引力があれば小さめなハンドクリーナーでも構いません。

ある程度ゴミを吸ったら、鉢受皿と洗面器を外してバケツの底に溜まったゴミを捨てます。
バケツに洗面器を入れて鉢受皿を乗せるだけなので、再セットも楽です。

非常に安く、性能が良いサイクロン集塵機ですが、1つだけ難点があります。
それはスイッチ!
ゴミを吸い取る際には、掃除機のスイッチを入れなければなりません。
家庭用掃除機のスイッチは、ホースの手元に付いています。
吸込口を持って、掃除機ホースの根元にあるスイッチを入れるのが、ちょっと面倒です。
100均グッズを使った簡易集塵機なので、贅沢は言えませんな。


自作サイクロン集塵機を使用する上での注意


上にも少し書きましたが、ゴミを吸っている時に吸込口を塞がないようにしてください。
バケツはそれほど強度がないので、掃除機の吸引力に負けてへこんだり割れたりします。

実は、使っていてバケツ割りました(笑)
気を付けてはいたのですが、ゴミを吸っている時にうっかり吸込口を地面にくっつけて塞いでしまいました。
べコッという音と共にバケツがへこんで割れました。

今はガムテープで割れたところを塞いで使っています。
酷い割れ方をしたら無理ですが、少しの割れならガムテープ補修で使えるようになります。

バケツに溜まったゴミは、小まめに捨てましょう。
吸引中は内部の負圧によって鉢受け皿がバケツに固定されるのでバケツを倒してもゴミがこぼれる心配はありませんが、バケツが派手に割れると溜まったゴミをぶちまける事になります。

丈夫なスチール缶で作れば少しくらい吸入口を塞いでもへこむ事は無いでしょう。
スチールのペール缶は、ホームセンターなどでも売られています。
蓋が付属している商品もありますが金属蓋の穴あけは鉄工用ドリルが無いと難しいです。
一般的なバケツは10リットル、ペール缶は18〜20リットルなので大きめになります。

この自作サイクロン集塵機で粉塵を吸うなら、途中で1度は掃除機内のダストボックスにどれだけゴミの溜まるかチェックしてください。
何かの原因で上手くバケツ内に粉塵が落ちないと、掃除機のフィルターに粉塵が詰まり排気出来なくなります。
掃除機は元々ゴミや塵を吸う道具なので壊れる事は無いと思いますが、念のため掃除機側に粉塵が流れる量を確認しておいた方が安心して使えます。

今回の自作サイクロン集塵機、いかがだったでしょうか?
お手軽に作れるのでヤスリがけ時に出る削り粉の処理にお困りの方は是非お試しくださいな。

posted by ユージュー at 12:13 | Comment(0) | DIY 工具