前回に引き続き、糖質制限中に食べられる大豆粉パンの話です。
「みたけの失活大豆粉」と「パナソニックのグルテン粉」が揃ったので、美味しいと噂の大豆粉パンを焼きます。
ふすまパンは、モサモサ感が強くて私にはハードルが高かったです。
ふんわり軟らか、もっちりしたパンが食べたい!
購入した大豆粉とグルテンで美味しいパンが出来るか?
大豆粉は色々なメーカーから出ていますが、ほとんどの商品は生の大豆をそのまま粉にしたもので「生大豆粉」と呼ばれます。
生大豆粉では無く、失活という加工をした上で販売されているのが「失活大豆粉」です。
失活って何?という方も少なくないでしょう。
私もちょっと前まで知りませんでした。
失活を少し説明します。
生大豆粉は失活すべし!
みたけの失活大豆粉は値段が安く、大豆粉特有の臭みやエグミがありません。
失活処理済みなので、下ごしらえが要りません。
生大豆粉は、失活という下ごしらえが必要な場合があります。
「大豆粉って下ごしらえが要るの?」と思いますよね。
大豆は、納豆、味噌、豆腐などの原料として身近ですが通常は生で食べません。
生で食べられない理由があるのです。
生大豆には植物毒である「トリプシンインヒビター」というタンパク質が含まれています。
トリプシンインヒビターは消化を阻害する働きがあるので、人が食べると消化不良や下痢をすることがあります。
この毒を、熱や酸を利用して抑えるのが失活処理です。
活性を失わせるので「失活」と呼ばれます。
失活によって、豆の青臭さの原因である「リポキシゲナーゼ」という酵素も弱まります。
長時間の加熱により強く失活させたものが、きな粉です。
きな粉をそのまま食べても大丈夫なのは、しっかり火を通しているからです。
1972年の日本食品工業学会誌Vol.19「大豆乳を利用したチーズよう食品の製造に関する研究」によると、生大豆を100度で20分加熱しても30%程度トリプシンインヒビターは残るとの事です。
人がトリプシンインヒビターを摂取すると、腸内で分泌される「トリプシン」というたんぱく質分解酵素を阻害します。
トリプシンインヒビターはトリプシンと結合して、働けないようにしてしまいます。
悪質なストーカーみたいなやつですな。
トリプシンによるたんぱく質の分解が出来ないと、量でカバーしようと膵臓が頑張ってトリプシンを製造します。
その結果、膵臓が肥大してしまいます。
生大豆をラットに与える実験で、膵臓癌との関係が確認されています。
ラットに与えた量を人間に換算すると「こんなに食えるか!」という量になります。
この事から、人がすぐに癌になるとは考えにくいですが、注意した方が良い方も居ます。
念のため膵臓に問題がある方は気を付けましょう。
乳幼児から13歳くらいまで、神経の働きに問題のある方、痴呆症やアルツハイマーなどの症状が出ている方も注意が必要なようです。
持久力が必要なアスリート、妊婦、低血糖症状の方も避けた方が良いそうです。
トリプシンインヒビターは、これまで邪魔者扱いされてきました。
しかし、最近の研究で糖尿病予防効果がわかってきました。
大量に摂るのは良くありませんが、多少であれば膵臓を活性化させインスリン分泌を増加させることで糖尿病治療や予防に役立つとか。
アメリカやイタリアでは、10年前からトリプシンインヒビターを2型糖尿病の栄養療法で用いる研究が行われています。
大豆製品には、弱い加熱処理をした商品が多くあります。
それらの大豆製品には、トリプシンインヒビターが少しだけ活性状態で残っています。
活性残存率は、木綿豆腐2.5%、絹ごし豆腐4.3%、豆乳13.0%、納豆0.7%、醤油0.8%、味噌0.3%くらいだそうです。
日常的に大豆製品を摂取することで、健康に役立つ可能性があります。
トリプシンインヒビターに関しては、まだ研究段階なのでどこまで正しいか判りません。
ただ、多くの大豆製品に活性状態で残っている事から、それほど怖がる必要はないでしょう。
大量摂取はダメですよ!
生大豆には、トリプシンインヒビター以外にも毒性とされる物質が含まれています。
フィチン酸塩はミネラルの吸収を妨げます。
ゴイドロゲンは甲状腺機能を低下させると言われています。
これらは反栄養素と呼ばれており、必要ミネラルの吸収を阻害する働きもあります。
ちょっとややこしい言葉が並んでしましましたが、これらのリスクがある可能性は覚えておきましょう。
みたけの失活方法
みたけの失活大豆も加熱によって失活しているようですが、具体的な失活方法や活性残存率は公表されていないので判りません。
失活大豆粉を食べて具合が悪くなったとは聞かないので、トリプシンインヒビター残存率は安全なレベルまで失活されていると思われます。
私も食べてますが特に問題ないです。
他社の生大豆粉レビューで、胃の不快感と吐き気を起こしたというコメントがありました。
パンやお菓子などの高温調理では、調理中の熱によって生大豆粉が失活されます。
青臭さが残る場合はありますが、問題が起こるほどの毒性は残りません。
危険なのは、何らかの原因により熱が十分に加わらなかった場合です。
熱による失活がされないので、毒性が失われません。
レビューが事実なら、加熱が不十分な生大豆粉を食べた可能性が高いです。
生大豆粉をフライパンで炒ってから使っている方や、大豆粉を熱湯で練ってから酸を加えて失活している方もいます。
大豆粉を失活するのに1番手軽な方法は加熱する事です。
熱湯と合わせるとか、蒸すとか、炒るとか、方法は何でも構いません。
90度以上に加熱するのが望ましいですが、140度を超えると風味が失われたり熱変性が起こるようです。
電子レンジでの加熱は、温度を一定に保つ事が難しいので失活には向いていません。
私はこのような失活処理が面倒なので、失活済みの大豆粉を買ってます。
安全性が高い失活大豆粉ですが、パンの材料にすると膨らみにくいという弱点があります。
国産でも外国産でも膨らみづらいのは変わりません。
失活処理される過程で、大豆が持つ粘りが失われるのでしょう。
生大豆粉が良く膨らむのは、火を通していないからです。
生大豆粉と失活大豆粉は違うものと思ってください。
ネットにも多くのレシピが公開されていますが、どの大豆粉を使っているか書かれていないレシピを参考にすると多くの場合膨らみません。
失活大豆粉を使われる方は、「失活大豆粉」または「みたけ大豆粉」と書かれているレシピを参考にしましょう。
大豆粉にしたのに失敗!
最初は大豆粉だけでパンを焼こうと思いましたが、単価を抑えるために他の粉も使います。
ふすまパンで、強力粉が入っていないとパン特有の香りや食感が失われるのが解りました。
糖質は上がってしまいますが、強力粉を入れた方が食べやすく香りの良いパンになります。
※この記事では詳しいレシピを敢えて書きません!理由は下の方で。
・大豆粉パン1回目
強力粉40g
失活大豆粉80g
ふすまパンミックス20g
グルテン粉80g
あとはドライイーストなどの定番素材をいつもの分量投入です。
うちのホームベーカリーで小麦パンを焼く場合は、強力粉を250gくらい入れます。
粉の量を何となく合わせてみました。
こねている生地は、グルテンのお陰でふすま粉ミックスより明らかに粘りがあります。
こね中に生地から少しだけ大豆っぽい香りがします。
結果は、このようになりました。
膨らみませんでした・・・ちっさ!
みたけの失活大豆粉は膨らまないと知っていましたが、グルテン80gでは足りないようです。
食感は膨らまなかったのでギッシリ感はあるものの、ふすまパンよりは軽い口当たりです。
大豆粉特有の臭さは、全くありません。
薄く焼き色が付く程度にトーストすると、表面がバリッとして食感も悪くないです。
これまでよりかなり良くなったとは思いますが、パサパサ感があります。
オリーブオイルとは合いませんが、バターとの相性は良いです。
・大豆粉パン2回目
強力粉30g
失活大豆粉80g
グルテン粉100g
ふすまパンミックス10g
グルテン粉100g
前回膨らまなかったので、グルテンの量を20g増やして100gにしました。
少し強力粉を減らしました。
グルテンを多くしたお陰で、こね中の生地の粘りが増しています。
こね終わりに触ってみても粘りがありました。
軟らか過ぎず硬すぎず、生地は丁度良い軟らかさです。
焼き上がりはコレ!
前回より若干膨らみましたが、今回もあまり膨らまず。
山形パンの半分くらいの高さですね・・・
安定のみっちりパンです。
一口食べると「おぉ、良い!」と思いますが、噛んでいるとまだボソボソ感が残っています。
前回よりマシになりましたが、まだイマイチ。
膨らんでいないのが良くない気がします。
他の大豆粉であれば、グルテン粉を100gも入れれば膨らむはずです。
膨らまないのは、大豆粉が悪いのか、グルテン粉が悪いのか・・・
膨らませるために増粘剤が必要か?
グルテン粉は良くこねないとグルテン形成をしてくれない事があるようです。
失敗した2回は、いつもより多くこねるようにしました。
よって、こね不足は考えにくいです。
グルテン形成に必要な粘りが足りない事も考えられます。
私のようになかなか膨らまなくて「増粘剤買った方が良いのかな〜」という境地に至る人も少なくないはず。
粘度を補助するために、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナンなどの増粘剤を使っている方も居ます。
これらの増粘剤は市販のパンやお菓子に良く使われていますが、近所で気軽に買えるものではありません。
ほぼ何でも揃っている冨澤商店にも行きましたが、置いていないとの事です。
ネット通販で売っていても高いので、iHerbなどで個人輸入して使っている方が多いです。
私も個人輸入を検討しましたが、送料を考えると高くつきます。
手軽に買えないものを日常的に使うのは大変です。
そもそも、手間をかけてパンを焼くなら余計なものは入れたくないです。
毎日食べるものですからね。
手に入りやすくパンの増粘剤代わりになるものに、オオバコダイエットがあります。
溶かして飲むとお腹で膨れるというダイエット商品です。
サイリウムもオオバコ科の植物使った粉末です。
これらのオオバコ粉末は水分と合わさると粘りが出ますので、パンに入れると良い感じでグルテン形成を助けてくれるようです。
どうしても膨らまない場合の最終兵器としてならアリだと思います。
私には高いので却下です。
手に入りやすい増粘剤の代用品
もっと安くて近所で手に入るものは無いか?
ふと、ふすまパンのレシピを思い出しました。
ふすまは、パンの膨らみを悪くさせる材料です。
ふすまパンを膨らませるためにクリームチーズを入れている方が居たような・・・
クリームチーズがどのような役割を果たすのか調べると、グルテン形成の助剤になるとの情報がありました。
これだ!と思い近所のスーパーに走りました。
購入したのは、クリームチーズの中で1番お安いグレートバリューのクリームチーズです。
グレートバリューは、西友というスーパーのプライベートブランドです。
227g入って税込280円くらい。
さすが西友、他メーカーよりお安いです!
1度に20g使う計算なら10回以上焼ける量です。
パンに乗せても美味しいので、増粘剤として使えなくても無駄になりません。
クリームチーズはネットでも売っていますが、生モノなので近所のスーパーで買った方が安く済むと思います。
メーカーによって成分が違うと思いますが、西友PBでも大丈夫なのでどれでも良いでしょう。
クリームチーズは、1872年にアメリカの小さなチーズメーカーが販売して人気が出ました。
その後、クラフト社が規格や製法を統一した事で大量生産されるようになります。
広く知れ渡ることになったのは、クラフト社のおかげです。
ヨーロッパでは、もっと古くから作られていました。
当時は冷蔵技術がなく保存性が悪いため、市場に出回らなかったようです。
このようにクリームチーズは歴史のある素材なので安心して使えます。
クリームチーズが本当にグルテン形成を助けるのであれば膨らむはずです。
頼むから膨らんでよ〜と願いつつ3度目の挑戦です!
3度目でやっと膨らみました!
やったー!
やっと、パンケースからはみ出すくらい膨らみました!
これまでの失敗パンのように生地が詰まった食感の悪いパンからやっと開放されます。
生地安定剤や増粘剤を入れずに、ここまで膨らめば問題なしです。
ここまで長かった・・・。
前回の失敗から、グルテン粉の量をどこまで増やせば膨らむか実験が必要だと感じました。
そこで、グルテン粉を120gに増量しました。
粉の量とグルテン粉の比率を大体1対1(グルテン以外の粉1:グルテン粉1)にしてみました。
強力粉30g
失活大豆粉70g
ふすまパンミックス10g
スキムミルク10g
グルテン粉120g
クリームチーズ20g
カットしてみると、そこそこ軟らかいです。
空洞も無く焼けています。
これまでの失敗パンに比べたら段違いに食べやすいです。
軟らかさもあって、美味しく食べられます。
美味しいのですが、噛んでいると微妙に粉っぽさが口の中に残ります。
小麦パンには無い独特のモサモサ感です。
当記事に詳しいレシピを書いていないのは、まだ改善が必要と感じているからです。
ふんわりはしていますが、もっとフワフワにしたい!
もっちりさと、しっとりさも、もっと!
今までのに比べたら十分過ぎるほどですけどね、ホントに。
膨らんだだけで、大きな食感の改善があったのは確かです。
求めているのが普通の小麦のパン食感というところに無理があるのかなぁ?
大豆粉パンはこれが限界なのか、まだ改良の余地はあるのか?
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