前回は、UPSを選ぶ際に知っておかなければならない仕組みの話でした。
今回は、何を繋ぐべきか、容量はどうやって決めるか、寿命や廃棄方法の話です。
UPS経由で電源を取れば、電源消失した時バッテリーから電気供給され、一時的に機器のダウンを遅らせる事が出来ます。
出来るだけ多くの機器を繋ぎたいところですが、全ての機器を繋ごうとするとUPSの容量がいくらあっても足りません。
UPSのバッテリー容量が大きくなれば、価格も上がってしまいます。
私の場合、電源消失時に作業中データをセーブするための時間を得るのが1番の目的です。
2番目の目的は、電源消失時にNASを安全に自動シャットダウンさせる事です。
経験からの印象ですが、NASは急な電源カットに弱い気がします。
停電などで、NASが正常にシャットダウンが出来なかった時に、トラブルが起きる事が多くありました。
立ちあがらなくなったりして、復旧に時間が掛かったので、気を使うポイントです。
考えると、あれもこれもと繋ぎたいものが増えて行きますが、全部を繋ぐ事は出来ないので、優先順位を付けます。
UPSに繋ぐ電化製品の優先順位
突然電源が落ちると、作業中のデータがセーブが出来ないままになってしまいます。
セーブできずに電源が落ちると、長い時は半日分の作業が水の泡になります。
小まめにセーブしろ!って話ですが、ついつい忘れちゃいます。
私のような作業者で無くとも、UPS導入を検討されている方は、パソコンの優先順位は高いはずです。
先ず優先すべきは、パソコン本体とモニターです。
次に優先度が高いのが、NASや外付けHDDです。
NASや外付けHDDへファイルを書き込んでいる途中に電源消失すると、書き込みファイルは壊れます。
セーブできていると思っていたら、「データが壊れています」と警告が出て、読み込めない・・・なんて事になり兼ねません。
NASを繋いでいる場合、ルーターやハブ経由でアクセスをしていると思います。
電源喪失時にアクセスできるよう、ルーターやハブへの電気供給も必要になります。
テレビ、レコーダー、ラジオ、音楽プレーヤー、スピーカーなど停電の際に消えても良いものは、優先順位を低くしましょう。
優先すべきものは、突然電源消失した場合に痛いものです。
繋いでいる機器の使用電力が多ければ、早くバッテリーが無くなりますし、少なければバッテリーは長持ちします。
1分でも長くバッテリーが持てば、急な停電でも焦らずゆっくり対応出来る事になります。
バッテリーが弱ってくると、カタログスペックより短い時間しか持ちません。
機器によっては、バッテリー能力低下で警告が出る商品もありますが、全てにそうした便利機能がある訳ではありません。
いざという時のUPSなのに、バッテリー切れを起こしたら意味がないです。
UPSは、非常事態用のお守り程度と考え、繋ぐ機器は限界まで少なくしましょう。
レーザープリンター、コピー機、冷蔵庫、エアコン、掃除機、ドライヤーなどは緊急性がない部類だと思います。
そもそも、こういった急激な電圧変更が起こるものは、UPSとの相性が良くないので繋ぐべきではありません。
電圧が下がると足りない電気を補おうと、無駄にUPSバッテリーが動きます。
ピーク電力が大きいものを連続使用すると、一時的に動いたとしてもUPSの故障に繋がる場合もあります。
多くのUPSは、こうした高ピーク電力機器を使用不可としています。
購入するUPSの注意事項を確認してください。
UPSは動かせば動かすほど寿命が縮みますので、日常的にバッテリー駆動するような使い方は避けましょう。
電気使用量の計算をするのだ!
パソコンの電気使用量を計算しましょう。
パソコンというのは、組み込まれているパーツによって電気使用量が物凄く違います。
また、パソコンは通常時と高負荷時で、かなり消費電力が変わります。
各パーツの最大量を計算するのが確実ですが、セット済みのパソコンなどは中に入っているパーツ構成が解らないと思います。
自作パソコンやBTOで、パーツ構成が解っている方は、それぞれのワット数を足して行ってください。
パソコンに搭載されている電源ユニット(電源パーツ)のスペック表から算出する方法もありますが、表の見方が結構面倒です。
素人だと系統がどうなっているか、最大出力や変換効率なんてのもあって非常に難解です。
また、どう各パーツに繋がっているか調べるのも、ケースを開けないと解らないので面倒です。
そこで、一般的な数値でざっくり計算します。
ノートパソコンのワット数は、30〜60ワット程度でしょう。
デスクトップは、100〜400ワットくらいですかね。
ゲームをしないデスクトップパソコンなら、モニタを除いて150W程度でしょう。
ミドルクラスまで行かなくても、10万以上のデスクトップパソコンの場合、パーツ構成により大きく消費電力が違います。
パーツの説明書が無い場合は、以下を参考にして下さい。
CPUが、100〜140W。
マザーボードが、10〜15W。
オンボードではないグラフィックカードが乗っている場合は、150〜200W。
グラフィックカードの値段にして、1万円当たり100Wくらいで計算すると良いです。
高級なグラフィックカードで、電源ユニットから直接電源を取ってるもの(画像処理に適した物やゲーム用カード)は、もう少し高いワット数の可能性もあります。
HDDは、1台10W
SSDは、1台8W
ケースの空冷ファンが10〜15W
LEDモニターなら、20〜30W
これらを、ざっくり合計すると400W前後です。
400Wなので400WのUPSで足りるかと言うと、足りません。
パソコンというのは、色々な作業をして負荷がかかると、最大出力を上げます。
パソコンの電源ユニットは、そういう時の為に多めのワット数のものが積んであります。
電源ユニットは、50%程度の出力域が一番効率が良いという事もあり、定格400Wなら600Wくらいの電源ユニットが積んであると思います。
つまり、最大負荷時に耐えられるようにするなら、600Wに耐えられるUPSが必要です。
こんな感じで、繋ごうとしている機器のワット数を合計して、必要なUPSの容量を決めます。
UPSの仕様が500W(800VA)の場合、490W(790VA)くらいまでの機器が接続可能です。
UPSの仕様が500W(800VA)の場合、500W(800VA)までの機器の接続も可能ですが、常に電気をフルで使うような機器の場合は少し大きめのワット数の方が良いでしょう。
容量に余裕がないと何か起きた時に、二次トラブルが起きる可能性があるので、なるべく余裕がある容量のUPSを選びましょう。
UPSのバッテリー出力以上の機器を繋いでいると、停電時にUPS自体がシャットダウンしてしまい役目を果たしません。
理科と算数の時間!電気の計算式
機器の使用電力は、VA(ボルト・アンペア)、W(ワット)、A(アンペア)といった単位で記載されています。
統一してくれれば良いのですが、表記が機器によって異なるので混乱するところです。
使用する機器の電気使用量が解らない場合は、計算してください。
W(電力・ワット)=V(電圧・ボルト)×A(電流・アンペア)
V(電圧・ボルト)=W(電力・ワット)÷A(電流・アンペア)
A(電流・アンペア)=W(電力・ワット)÷V(電圧・ボルト)
こういった電気の公式を、たぶん理科で習った事があると思います。
100Vを100W電球に流した場合は1Aとか、やりましたよね?
覚えてますでしょうか?
例えば、60Wの電球の電流を求めよ、という問題の場合
(60W÷100V=0.6A)になります。
では、VA(ボルト・アンペア)は、何でしょう?
パソコンを自作する人は電源周りで出てくる単位なので御存知かと思いますが、一般の方には馴染みが無いと思います。
コンセントからの電気は交流なので、皮相電力(VA)と有効電力(W)という値があります。
皮相電力(VA)に力率という、電力をどれだけ有効使用できるかの値(力率=W÷VA)をかけた数値が有効電力(W)となります。
電球などの単純な機器では(W)と(VA)が同じになりますが、家電製品のように複雑なものはロスが生まれますので(W)と(VA)が変わってきます。
理科で習った計算式は、直流の場合の計算で、ロスは含まれていません。
現実的な有効電力を求めるには、皮相電力(VA)という値が必要になる訳です。
W(電力・ワットの有効電力)=VA(ボルト・アンペア)×力率
VA(ボルト・アンペア)=W(電力・ワット)÷力率
力率は大体決まっていて、モーターなどは0.85、パソコンやモニタなどの場合0.7程度、サーバーなら1.0程度です。
500WのパソコンのVAは、(500W÷力率0.7%=714VA)となります。
数字が苦手な方は、公式を見るだけで虫唾が走ると思います。
私も嫌いなので、必要な時以外はやりません。
じゃまくさいっす。
パソコンのパーツ構成が解っている方は、下記計算サイトが便利です。
バッテリーからの給電で何分もつか
停電した際、UPSバッテリーからの給電に切り替わりますが、どれくらいの時間給電できるかです。
どれくらい持つかは、どれくらい電気を使うか次第です。
接続機器が多く電気を多く使えば短くなりますし、電気使用量を抑えればそれだけ長く持ちます。
300WのUPSに、100Wの機器を繋げた場合、15〜20分
300WのUPSに、200Wの機器を繋げた場合、6〜9分
300WのUPSに、300Wの機器を繋げた場合、3〜5分
メーカーと機種により違いがありますが、これくらいが目安だと思います。
パソコンなどの場合、何をするかによって使う電気の量が変わり、電気の使用量が一定ではありません。
場合によっては、これより長く持つかもしれませんし、短いかも知れません。
また、バッテリーの劣化によっても給電時間は短縮されます。
300WのUPSに100W未満のものを繋ぐなら、もう少し容量がないUPSの方が安くて良いと思います。
300WのUPSなら、200W前後の機器を繋ぐ形が多いと思います。
電源喪失から、セーブに3分掛かったとします。
バッテリーが無くなる前に、パソコンを安全にシャットダウンするのに2分。
席を離れても、1〜2分で戻れる状態とします。
それ以上長く席を離れる時に、セーブしないでデータが失われるのは、自業自得です。
こういった条件で考えると、全部で7分程度あれば足りるでしょう。
300WのUPSに、200W前後の機器を繋いでいた場合、9分前後持ちますのでギリ間に合うかなって感じですね。
容量が大きいものでも、使用する電気量が多ければ長い時間持ちません。
長時間持たせたい場合は、追加バッテリーというものを出しているメーカーもあるので検討してください。
正確に詳しい給電時間を知りたい方は、各メーカーサイトにあるリストを見てください。
UPSのバッテリーは何年使えるか?
UPSの中に入っているバッテリーがどれくらい持つかは、メーカー、商品によりけりです。
カタログスペックで4年となっていても、多くの場合4年持ちません。
スマホのバッテリーもそうですが、バッテリーは熱に弱いものです。
5〜25度だと4年持つけど、30度だと3年もちません。
35度だと2年まで寿命が縮みます。
常に暑い部屋で使用する場合は、寿命が半分になると考えておいた方が良いでしょう。
また、バッテリーからの電気供給が行われると、その分寿命が縮むと思ってください。
ユーザーの感想を見ると当たり外れもあるようで、4年寿命のバッテリーが7〜8年持ったケースもあるようです。
逆に1年で警告ブザーが鳴り始めたというケースもあります。
殆どのUPSは、バッテリーの寿命がくると警告音が鳴り始めます。
これが結構うるさくてドッキリします。
心臓に良くありません。
高機能な機種なら警告音量が調整出来たり、音を出ないように設定できます。
バッテリーが寿命になると送電が不安定になり、パソコンがブルースクリーン状態になる場合があるようです。
度々パソコン画面がブルースクリーンになる場合は、恐らくUPSにも何らかの異常が出ていると思いますので確認しましょう。
殆どのUPSは、バッテリーの寿命が来たら交換できるようになっています。
ただ、UPSというのは価格の殆どが「バッテリーの値段」です。
1万円未満の低価格帯UPSでもバッテリー交換は可能ですが、交換バッテリーが高価なので、新品を買っても大した違いが出ません。
バッテリー寿命は、メーカーにより年単位で違います。
バッテリーの生産国や品質で耐久度が違うようです。
そのためカタログスペック通りの期間、使えないというのが定説になってます。
安いものではないので、より1年でも長い寿命、保証が長いメーカーのUPSがおすすめです。
使えなくなった時のバッテリー処分
バッテリーの寿命が来たら、新品に買い替えるにしても、バッテリー交換するにしても、ダメになったバッテリーがゴミになります。
バッテリーは、「廃棄物の処理および清掃に関する法律」の「特別管理産業廃棄物」に指定されていて、ゴミ捨て場には捨てられません。
処分方法は各自治体によって異なりますが、回収不可の自治体も多いと思います。
各メーカーが回収しているかどうかを調べました。
・APC(シュナイダーエレクトリック)
交換後バッテリーを無料で引取ってくれます。
バッテリーのみ引き取りは、送料は自己負担。
APC製UPSをご購入した場合、どのメーカー製でも古いUPS本体も引き取ってくれます。
製品ユーザー保証登録をすると、引き取りUPSの送料が無料になります。
・オムロン
交換後バッテリーを無料で引取ってくれます。
送料は自己負担。
オムロンもAPCと同じく、オムロンUPSに新規で買い替えなら、古い他社製UPSを引取ってくれます。
使用済みバッテリー、本体共に、送料は自己負担です。
・CyberPower
交換後バッテリーを無料で引取ってくれます。
送料は自己負担。
APCと同じく、CyberPower製UPSに買い替えなら、古い他社製UPSを引取ってくれます。
使用済みバッテリー、本体共に、送料は自己負担です。
・パワーコムジャパン
事前連絡が必要ですが、バッテリーだけは無料回収してくれます。
送料は自己負担です。
他社バッテリーは、回収してもらえないようです。
・ユタカ電機製作所
本体、バッテリーの無料回収をしてくれます。
買い替え時でない場合でも、自社製品なら回収してくれるようです。
送料は、自己負担です。
多くのメーカーが無償回収してくれますが、バッテリー交換時や新規UPS購入時など、制限が付いているメーカーもあります。
また、期限を設けている場合もあり、CyberPowerのように事前連絡から送付まで、1カ月間だけしか対応しないメーカーもあるので注意が必要です。
処理業者にバッテリー処理を任せると、リサイクル料などにお金が掛かるので、メーカーがどういった対応をしているか見ておきましょう。
バッテリー回収だけ見ると、APCが一番良さそうです。
値段より性能を重視すべし
この記事を参考に、どんな機器をUPSに繋いで、どれだけの容量が必要なのかを検討してください。
UPSは、安心を買うものです。
価格だけで決めてしまうと、繋げる機器が少なくなってしまいます。
最低でも1台のパソコンを余裕をもって動かせるものにした方が良いと思います。
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