
最近は地震や集中豪雨など災害も多く、異常気象と言ってもおかしくない状況です。
過去の災害を思いだしてみても、電気は直ぐ止まります。
事前に電気が止まるのが解っていれば良いのですが、「天災は忘れたころにやってくる」と言います。
我が家は、家族全員がポンコツなので天災に関係なく、時々ブレーカーが落ちます。
「コレとコレを同時に使うとブレーカーが落ちる」と理解しているのに、やる人が居ます。
最近の家電はパワーがあるので、ワット数が高いものが多いのも原因だと思います。
正直「なんどやれば覚えるの?」という感じです。
突然の電力カットが繰り返されるとパソコンがヤバイです。
特にHDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置は、突然の電源カットに弱いものです。
パソコンの電源が入っていて、HDDが動いている時はヘッド(データを読むパーツ)が、ディスク(データが書きこんであるところ)から数ミリ浮いた場所にあります。
読み込みや書き込みが必要な際には、ヘッドが素早くその領域に移動します。
ディスクは、凄まじい早さで常に回転しています。
正しくパソコンの電源が切られると、電源が落ちる前にHDDのヘッドはディスクを傷つけないよう、少し離れた位置に退避します。
電源が切れた状態でパソコンが何らかの理由で揺れた際、ディスクにヘッドがぶつかり、物理的に傷が付くのを防ぐための仕組みです。
ディスクが傷ついてしまうと、そこに記録されている磁気データの読み書きが、出来なくなってしまいます。
これが、HDDが壊れる1つの原因です。
HDDというのは、電源のオンオフ時に一番トラブルが起きやすいものです。
ヘッドが大きく動く際に、どうしてもディスクとの干渉が起こり、傷つけてしまう事があるようです。
日常的な使用でも電源のオンオフ時にリスクがあるのに、急な電源カットとなればトラブルの可能性は飛躍的に上がります。
最悪、HDDを破損させデータが全てクラッシュする事もあります。
HDDにOSを入れている方は、パソコンが立ちあがらなくなる場合もあります。
致命的な破損まで行かなくても、セーブ中に電源が落ちると、書き込み中のデータはクラッシュします。
仕事のデータがやっと出来たからとセーブしている最中に、バチン!とブレーカーが落ちた時には、魂が抜けるほどのショックです。
血の気が引いて倒れそうになります。
これ、実際何度もあったんですよ・・・数時間分の作業が水の泡とかね。
調子が悪い時の数時間ならどうでも良いのですが、進みが良い時の数時間は、時間にカウントできない程の成果があるもの。
クライアントへの提出間近なのにブレーカー落とされると、焦りと再度同じ作業をせねばならない、やるせ無さでキレそうになります。
故意では無いので仕方ないですが、うっかりを何度も繰り返すので諦めました。
契約アンペア数を上げて電源容量に余裕が出来れば、少しはマシになると思いますが、きっと余裕があるという安心感でブレーカーを落とすでしょう。
ブレーカーが落ちる度に、ガミガミ言うのも(言われるのも)疲れるので、文明の力に頼る事にしました。
文明の力は、無停電装置という機械です。
無停電装置は、英語で「Uninterruptible Power Supply」なので、略してUPS(ユーピーエス)と一般的に呼ばれます。
少し前までは、かなり高価だったので検討した事がありませんでした。
いい加減なんとかしないとならないと思い、久々に調べてみたら手が届く価格帯になっていたので、検討に入りました。
機器によって給電方式が違う!
調べるまで全く知りませんでしたが、UPSには大きく分けて3種類の給電方式があります。
全部一緒じゃないんですね〜。
調べた結果をまとめました。
1:常時商用給電方式
通常は商用電源(コンセントからの電気)をそのまま供給して、停電が発生したらバッテリーからの給電に切り換える仕組みです。
最もシンプルな方式で、小形にでき、軽量で安価な特徴があります。
バッテリー給電していない時は、コンセントからの電気をそのまま出力するので、電気ロスがありません。
電源タップと同じような仕組みです。
コンセントからの電気が切れ、バッテリーに切り替わる際に一瞬だけ電源が途切れます。
瞬間的なのでパソコンの電源が落ちる事はありません。
常時商用電源の電気の出力波形には、正弦波(せいげんは)と矩形波(くけいは)の2種類があります。
正弦波はコンセントと同じ電気で、緩やかな電圧の波があります。
AV機器やパソコンの電源などは、コンセントと同じ正弦波の方が安定します。
一方、矩形派はブロックのように直線的な電圧の波です。
機器側にPFC(力率改善回路)が搭載されていると、矩形波での給電では動かないものがあります。
多くのパソコンの電源パーツは、PFCを搭載していますので動かない場合もあります。
電源パーツの仕様次第、UPSとの相性次第なので、動作するかどうかは電化製品次第です。
正弦波と矩形派については、下でもう少し詳しく解説します。
2:ラインインタラクティブ方式
基本構造は常時商用給電方式と同じですが、常時商用電源方式のパワーアップ版みたいなやつで、電圧変動があった場合にある程度までならUPS内部で補正して出力する機能があります。
バッテリ運転への切り替え頻度を下げるられるので、常時商用給電方式よりバッテリー寿命が長くなります。
また、通常時の出力にトランスという部品を経由しているので、安定的な電圧コントロールができます。
バッテリーを使用していない時は、コンセントからの電気をそのまま出力するので、電気ロスがありません。
負荷が大きく変わるような電気変動が大きいサーバーやレーザープリンターなどを繋ぐ事が出来ます。
こちらもコンセントからの電気が切れ、バッテリーに切り替わる際にほんの一瞬だけ電源が途切れます。
常時商用電源方式より、こちらの方が途切れる時間が短いです。
正弦派のものが殆どだと思います。
3:常時インバータ給電方式
常にバッテリー充電しながら、インバータ(直流から交流を発生させる装置)を使用して給電する方式です。
複雑な機構で電気ロスが大きくなり、電気代は掛かりますが、非常に安定した電気出力を実現します。
バッテリーへの切り替え時も瞬断が起こりません。
こちらの方式は、正弦波しかありません。
少し大きな規模の機器を繋ぐ事が出来ますので、企業での業務用途が多いと思います。
正弦波と矩形波

先ほど軽く触れましたが、正弦波はコンセントと同じ電気の波なので良いに決まっています。
電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、AV機器、パソコンなど、ほぼ全ての電化製品は、コンセントと同じ正弦波の電気が使われる前提で作られています。
全てのUPSを正弦波にできれば良いのですが、価格という問題が出てきます。
バッテリーは直流出力なので、交流に変化させる複雑な機構が必要になります。
複雑になれば当然、価格に跳ね返ってきます。
矩形波で使用できる機器は限られています。
シンプルな炊飯器、扇風機、電子レンジ、ホットプレートなどで使えるものがあります。
ポイントは「シンプルな」というところで、家電の中でも動くものと動かないものがあります。
仮に動いても、モーターへの給電が上手く行かず、ガクガクしてしまい使いものにならない可能性もあります。
熱発生機器は、単純なものが多いので使えるものが多いようですが、IHが搭載されているものは動きません。
もし、矩形波のUPSを繋ぐ場合は、電気製品側の確認が必要です。
動いたとしても、一時的、緊急的に使うだけにした方が良いでしょう。
家電は本来、コンセントと同じ正弦波の電気で動くよう設計されているので、矩形波の電源を長期で使うと色々な問題が起きてきます。
先ほどPFC(力率改善回路)が搭載されている機器に、矩形波は使えないと書きました。
なぜ、最近の電源パーツにPFC(力率改善回路)が使われているかというと、高調波の発生を抑えて、太い電線を使わないで済むからです。
また、ピーク電流が抑えられるので、ブレーカーが落ちにくいというメリットもあります。
こうしたメリットが多い事からPFC(力率改善回路)を搭載している機器が多いのです。
矩形波の電気をPFC(力率改善回路)に流し続けるとどうなるか?
矩形波の電気で電圧の急激な上昇や下降が起こると、その変化にPFC回路が追いつかず、過大な電流が電化製品に流れ込みます。
流れ込んだ電流は、電化製品の電源パーツが受け止める事になり、負担が許容量を超えると壊れます。
どれほどの負荷に耐えられるかは、電源パーツ次第です。
一見、問題無く使えても、電気製品の電源パーツに負担が掛かっている可能性があります。
一瞬で壊れる事もあれば、少しだけ耐えられるもの、ずっと耐えられるものがあると言われています。
電源が壊れるのは、非常に稀だと思います。
負荷に耐えられない場合、家電の安全回路が働き電源オフになることが多いようです。
ただ、最悪の場合は、家電が負荷に耐えられず燃えますので、気を付けてください!
矩形波の良いところは、シンプルな構造で、パーツ数も少なく済みますので価格が抑えられるところです。
電源タップ型で5,000円以下の物もあります。
変わり種として「疑似正弦波」というものがあります。
直線的な波ですが、階段状に波にして正弦波に近付けているものです。
矩形波よりは動く機器が多いようですが、動かないものは動きません。
給電方式の比較
給電方式を比べると、このような順番になります。
(低価格・低性能)
常時商用給電方式
↓
ラインインタラクティブ方式
↓
常時インバータ給電方式
(高価格・高性能)
価格が高い方が、当然高性能です。
電化製品の電源パーツに負担を掛けずに、安全を買うなら正弦波しか選択肢はありません。
かと言って、1年に1回使うかどうか解らないものに、高額を支払いたくない事情もあると思います。
予算と価格と重要度を比べて、目的に合ったものを選択しましょう。
非常時に数分持てば良いなら、低価格の電源タップ型を選択肢に入れて良いと思います。
ただし、お持ちのパソコンで使用できるか、レビューなどで入念に確認すべきです。
過電流・過電圧にも有効
多くの方は、サージ防止機能のついた電源タップを使用されていると思います。
UPSは直接コンセントに繋いで使用する事が推奨されますので、殆どの製品に電源タップに付いているものと同じ「雷サージ防止」機能がついています。
「雷サージ防止」機能とは、雷が落ちた時などに電気が電話線やコンセントなどを伝って、過電流、過電圧(サージ)が流れて、機器が壊れるのを防ぐものです。
滅多に無いとは言え、近場で雷が落ちると周辺に大きな電気が流れるのは、防ぎようがありません。
サージの侵入経路は、アンテナ線、電話線、電線などです。
珍しいケースですが、本来余計な電気を逃がすための地面に刺しているアース線から逆流して来る場合もあります。
UPSの方式を知る
UPSの仕組みを調べてみて、初めて解った事が幾つかありました。
商品を選ぶ際に、購入しようとしているものがどういったものなのかを判断する材料として、これらの基礎知識が役に立つと思います。
UPSは、電化製品を動かす電気を扱うものです。
良く知らないまま購入して、「使えなかった・・・」と、ならないようにしましょう。
次は、何を繋ぐか?バッテリーはどれくらい持つのか?バッテリーの寿命などの解説です。
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