パソコンに詳しくない方は、NASってなによ?と思う方もいらっしゃると思います。
私は仕事でずっと利用してきましたが、利用者として使っていただけで、仕組みまでは理解していませんでした。
こうすればファイルをアップできるよ、ダウンロードできるよ、という説明を受けて使っていた末端ユーザーです。
実際にNAS環境を構築したのは、今回が初めてで戸惑う点も多く時間が掛かりました。
サーバーやネットワークに詳しい方は、読み飛ばしてくださいな。
NASとは、なにか
NAS(ナス)とは、Network Attached Storage(ネットワークアタッチドストレージ)というもので、ネットワーク接続型記憶装置を指します。
簡単に言うと、ネットワークを利用して使えるハードディスクで、総称してサーバーと呼んだりします。
ナスと言うと美味しい茄子科の植物を思い浮かべてしまいますが、一切関係ありません。
パソコンの容量が足りない時や、バックアップ用に外付けでHDD(ハードディスクドライブ)を繋いでいる方は多いと思います。
最近のテレビは、直接外付けのHDDを繋いで録画できるものも多いですよね。
こういったHDDは、「パソコンとHDD」や「テレビとHDD」という形で1対1の関係でデータをやり取りします。
NASを利用すると、1対複数の関係「NASと複数端末」で、データの共有使用が出来るようになります。
NASをLAN内に設置して、LANで繋がった複数のPCやモバイル端末からNAS内のデータを閲覧したり、データの出し入れをするような使い方です。
また、インターネットを使って外出先や友人の家のパソコン、スマホなどからもNASにアクセスできるようになります。
中小企業は、何百万もする高価なサーバータワーを購入できません。
頑張って購入したとしても、サーバーというのは買ったら使えるものでは無く、維持管理が必要です。
ある程度大きな会社なら社内にIT管理者を置いているので良いのですが、そうでない場合は外部に委託するしかありません。
サーバーというのは、とにかくお金がかかるものです。
世の中の大半は、大企業ではなく中小企業です。
そういった中小企業が低コストで簡単に管理できるサーバーがNASです。
NASの中身は、HDDです。
最近のNASはSSDが使えるものもあります。
SSDとは、Solid state drive(ソリッドステートドライブ)というもので、半導体素子メモリを用いた記憶装置です。
スマホやデジカメに使用するSDメモリーカードなどと中身は一緒です。
SSD価格は下がってきていますが、HDDと比べるとまだまだ高価格なので、現在もNASの中身はHDDが主流です。
NASを使っているのは企業だけではなく、個人で使っている方も多いです。
多少の知識は必要になりますが、何と言っても低価格で設置可能なので個人やスモールオフィス、SOHOなどで使うのに丁度良いのです。
安いものならNASが1万円台、NASの中に入れるHDDが2台で2万ちょっとくらいでしょうか。
個人使用では、映像や音楽の保管に使ったり、家族でいつでも閲覧可能な写真の保管場所にするなどの使い方があります。
スマホで写真を撮ってNASにアップすれば、家にあるNASに保存されていくのでデータの移し替えが必要無くなります。
音楽を聞く際も映像を見る際もNASにアップしておけば、欲しい時にスマホや外部のパソコンからダウンロードできます。
通信環境次第ですが、NASに保存されている音楽を外からアクセスして直接再生する事も可能です。
企業は、外部とのデータのやり取りなどの目的で使用される事が多いと思います。
複数の方が接続できるよう設定しておけば、別の人が時間差でデータを確認できますし、メール添付と違って容量の制限もありません。
DAS、NAS、SANの違い
ストレージ(記憶装置)のシステムとして、NAS以外にもDAS(ダイレクトアタッチドストレージ)Direct Attached Storageや、SAN(ストレージエリアネットワーク)Storage Area Networkがあります。
・DAS(ダス)
DASは、直接パソコンにストレージを接続するものです。
解りやすいのは、パソコン内にHDDが入っていて接続されていますが、この形がDASです。
パソコンに直接接続して利用する形なので、USBメモリやSDカードもDASと言えます。
パソコンをサーバーとして使う事で、外部からのアクセスも可能になりますが、当然のことながらパソコンの電源を切ると外部からの接続ができなくなります。
・NAS(ナス)
NASは、既存のネットワーク上に接続して、データのやり取りを行えるようにするものです。
ネットワークを介したストレージとして普及してきました。
既存のネットワーク内にNASを追加する事で利用できるので、設置が容易です。
LANを使ってアクセスするので、パソコンの電源が切れていてもネットワークが切れていなければ、外部から好きな時にアクセスできます。
常時接続を可能にする場合、NASとLANの電源は切れませんが、パソコンを24時間稼働させておくより電気消費量が少なく済みます。
・SAN(サン)
SANは、サーバに新たなストレージ用ネットワークを作ってストレージを統合したものです。
高性能サーバーに専用のネットワーク構成を用いる事で、高速でハイパフォーマンスを実現できます。
しかし、環境構築がすんげー面倒なので、非常に高い専門知識が必要です。
専用機器が必要なので、導入コストも半端ないです。
パッと見どれも同じような役目なので、解りづらいですがそれぞれメリットデメリットがあり、導入コストや手間が違ってきます。
安価にネットワークを介したデータのやり取りをしたい時に便利なのがNASです。
高負荷に耐えられる高価なNASもありますので、上を見たら切りがありませんが、安いものなら大体3〜5万くらいで設置出来ます。
多少苦労をしても安い方が良いですよね。
オンラインストレージで良いのでは?
通信環境の発展により、現在はクラウドを利用したオンラインストレージサービスも多く存在します。
代表的なところでは、Dropbox、SkyDrive、Google Driveなどです。
私も最初はクラウドを使った外部ストレージを検討しました。
導入コストも安いですし、多人数でアクセスもできます。
新たに機器を用意をする必要がないので、簡単に低コストで導入できます。
ただ、同業者でクラウドストレージを使っている企業はほとんどありませんでした。
なぜだろうと思って聞いてみました。
1番の懸念が、セキュリティーの問題だそうです。
いくらアクセス制限をつけても、オンライン上にデータが存在する事をクライアントは嫌がります。
クラウドは、ハッカーによるハッキング対象になる事が多いようです。
昨今はデータ流出事件が多くなっています。
原因はハッキングではなく、ほとんが関係者による人為的要因による流出です。
出してはいけない情報が漏れると、賠償を求められますので会社が潰れ兼ねません。
自前でサーバーを持ちデータを厳重に管理して、アクセス制限を掛けたりアクセスログを残しておけば、情報漏えい時に侵入者を追う事が出来ます。
自前で用意されたサーバーであれば、非常事態の際にデータを消去する事なく通信だけをロックするのも容易です。
カスタマイズの自由度が高いので、使いやすく安全なサーバーに出来ます。
外部ストレージは、メンテナンスやサーバーの不具合によるアクセス障害が予測できないという面もあります。
仕事に必要なデータがクラウドにしか無い場合、アクセスできないと仕事になりません。
数年前にhotmailがアクセスできなくなったり、メール消失などが起こりニュースになりました。
超大手のマイクロソフトですら不具合が起こります。
こういった不具合が原因で納品が遅れたり、データにアクセスできなくなるのは問題です。
規約に疑問があるという意見もありました。
どの会社とは言いませんが、クラウドにアップされたものは、クラウドストレージ運営会社が自由に使えるといった信じられない規約です。
そんなバカな!と思い確認しましたところ、本当にそれっぽい文言がありました。
アップしたものを誰が見て、どう使われるか解らないのは、薄気味悪いですよね。
バックアップの難易度が上がるというのも聞きました。
クラウドに上がっているデータが少なければ良いのですが、大きくなってくるとバックアップを取る際に非常に時間が掛かるとの事です。
社内サーバーにデータがあればHDDを丸ごと抜き差し出来ますので、そのまま保存も可能ですが、オンライン上にデータがあるとダウンロードに膨大な時間を要します。
このような事から、どうしてもクラウドストレージをメインには据えられないそうです。
外部ストレージの使用を禁止している企業もあります。
なるほどって感じです。
外部ストレージやクラウドストレージは無料で使えるものもありますし、非常に便利ですが、機密情報の管理という意味ではちょっと不安要素が多い気がします。
オンラインストレージは、機密扱いでは無いものや消えてもダメージを受けないものだけに使用した方が無難なようです。
NASの話に良く出てくる「RAID」とは
NAS製品を見ていると、RAID(レイド)という言葉が良く出てくると思います。
これは、Redundant Arrays of Inexpensive Disksの略です。
RAIDを簡単に言うとHDDにどう書きこむかの手法です。
NASを購入してHDDを装着すると、初期設定出来るようになりますが、その際にどのRAIDレベルにするかを選べます。
一旦、RAIDレベルを決めるとHDDを初期化しない限り、変更できないのでとても重要です。
RAIDには「RAID 0」〜「RAID 6」というレベルがあります。
最近「RAID10」というものも出てきています。
RAIDレベルは、個人や小規模オフィスで使うなら「RAID 1」が良いでしょう。
「RAID 0」は、複数のHDDに分散してデータを書き込みます。
こういった書きこみ方を「ストライピング」と言います。
複数のHDDを1つの大容量記憶域として書き込めますので、低価格で容量の少ないHDDでも大容量化が可能になります。
但し、データを分散化して書き込むので、HDDのどれか1つに不具合が起こるとデータの一部が欠損している状態となり、読めなくなります。
消えても良いけど取りあえず大きな容量が欲しい方は、こちらが向いています。
「RAID 1」は、2つのHDDに同じデータを書き込みます。
こういった書き込み方を「ミラーリング」と言います。
分散書き込みはしませんので、片方のHDDが壊れても壊れていない方のHDDからデータを読み取ることが出来ます。
2つのHDDが積めるNASを用意しなければならず、同容量のHDDも2台必要です。
容量違いのHDDを組み合わせて「RAID 1」設定すると、小さいほうのHDD容量に合わせてミラーリングされます。
消えると泣いちゃう大事なデータが多い方は、こちらの「RAID 1」を選択しましょう。
昔と違い大容量HDDが安価で買えますので、今は「RAID 0」にする意味が殆どありません。
HDDは消耗品で、確実に壊れるものと考えて「RAID 1」にしている方が多いと思います。
いま時のNASは「RAID 1」にして壊れたHDDを交換すると、自動でミラーリングしてくれるようになっています。
安価なNASでもRAID設定で、万が一に備えられるのが大きなメリットです。
RAIDとバックアップの違い
「RAID 1」は、2つのHDDに同じデータを書き込む事からバックアップと誤認されがちです。
「RAID 1」は、HDDの不具合を前提にして複製を作っている事から、バックアップのような素振りを見せます。
しかし、RAIDは読み込み不可状態を回避する仕組みに他なりません。
NASは、一時的なデータの保管場所と思っておいた方が良いです。
機械は、部品点数が多くなるほど故障リスクが増すものです。
HDDが壊れなくともNAS自体が壊れる可能性があります。
逆にNASが壊れなくともHDDが壊れる事もあります。
内臓されたLAN通信機器が壊れることだってあるでしょう。
私も過去に仕事で使用していたNASが、突然繋がらなくなり偉い目に遭いました。
HDDもNASも滅多に壊れるものでは無いのですが、忘れたころに突然ぶっ壊れます。
HDD関係の機器を過信してはいけません。
記憶メディアとして、SDカードやUSBメモリーなどのフラッシュメモリーを使ったものがありますが、バックアップには向いていません。
フラッシュメモリーは、内部素子に電圧を加えることで記憶させる仕組みです。
長期間使用しないでいると電池が放電するようにデータが消えて行きます。
環境にもよりますが、4〜5年くらいで消える場合もあります。
バックアップは、壊れにくくデータが消失しないものに記録するのが望ましいです。
書き込みオンリーのDVD-Rやブルーレイなどのメディアへの書き込みがおすすめです。
一旦書き込んだものは消えませんし、機械的に壊れることもありません。
バックアップ用途として優秀なディスクメディアですが、保存環境だけは注意が必要です。
手の油からカビが発生したり、記憶層が酸化して腐食する事があります。
紫外線にも強くありませんので、思ったより早く劣化が進む可能性があります。
指紋などの油分をつけないようにして、湿気の少ない暗い場所に置いておけば、かなり長期間問題は起きないでしょう。
メディアに記録するほどでも無ければ、外付けHDDを繋いでおくのも良いと思います。
一部のNASには、外付けHDDを繋ぐと自動でバックアップしてくれるものもあります。
私は、絶対残しておくべきものはブルーレイなどのメディアに焼いています。
消えたら嫌なものは、外部HDDかPC内のHDDにバックアップしています。
諦められるものは、NASに入れっぱなしです。
今回は、少し難しい記事内容になってしまいました。
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